プロフィール

新井英一宛に送って頂いたメッセージです。

[宇崎竜童 / 音楽家]
 新井さんの歌が、歌声が好きな男たちは多い。男ばかりではない。きっと、女も多いのだろう。新井さんの声には、今流行の、透明感のあると云われているシンガーたちとは、全く逆の「男」が在る。そして、その肉体からは、武骨で不器用な、荒ぶる魂の行き場を求め、ひたすら放浪続けている愚直ともとれる、懐かしき「男」の匂いが立ちこめている。しかし、それだけではない。僭越だが、滅法優しく、そして繊細だ。さすらう人に有りがちな、独りよがりがない。驚くほど優しく、真直ぐで生真面目だ。行く道はそれぞれに違うけれど、いつも心の何処か深い処に在る人だ。新井さんの歌は「人間」の歌だ。
[内田裕也 / ロック歌手]
 人に頼まれて、たまたま(新井の)歌を聴きにいったんです。そうしたら歌が良かったんです。その頃はまだ人の歌を歌っててね。自作の歌は少なかったんだけど、いけると思った。カンですね。
[丘 みつ子 / 女優]
 こだわり続けて生きるのも、こだわり捨てて生きるのも、愛する心があるがゆえ、自由に生きる決心をした、と歌っている英一さんの歌の根底には、恨み、つらみを超えた深い人への愛が貫かれている。誰もが持っている、苦悩とか、越えることの出来ないしがらみの様なものが解きほぐされていって、いつか素直で真直ぐな心にさせられてしまう様で、ぐちゃぐちゃな気持ちの時など闇夜の中から目を凝らしていると、だんだん一本の道がみえてくる。このまま、真直ぐ歩きなよと勇気づけてくれる、そういう人だと思う。
[樹木希林 / 女優]
 新井さんの歌を聞くと「なつかしい」と思うんですよ。それは昔がなつかしいというのじゃなくて、人間がもって生まれた原点にずっとふれるところのなつかしさなんですね。この病んだ社会で、何かを求めている人が新井さんの歌に出会えば、絶対に何かを感じると思う。人間がもともといたところに、ふっと行けそうな気にさせてくれる歌なんですよ。
[黒田征太郎 / イラストレーター]
 あいつから歌とったら何がありますか。何もないですよ。この腐り切った世の中であんな真っ直ぐな男が生きられるはずがない。
[黒田福美 / 女優]
 深い悲しみを背負っていたり、これ以上どうしようもない程つっぱっていたり、渇く程に優しさが恋しいと思う時、新井さんの唄声は静かに浸みてくる。あゝ私にはこの唄があったのだと思う。倒れそうに疲れた時には、傍で休ませてくれそうな力強い腕とあたたかい広い胸を感じるのだ。
[崔 洋一 / 映画監督]
 新井さんのことを語るのはやさしい。が、その本質は誰も分からないのだ。だから、僕は彼の歌を聞くのだ。体で受け止めるのだ。ハッキリ言えば、新井さんはやっぱり怖い人だ。それは、僕が自分の人生の旅として映画があり、夢と現実の行き交う自己発見をしているが如しである。新井さんや、僕が人の素朴な欲望を撃つ時、僕たちは果てしなき外側の人間として世の中と切り結ぶ。これが、人間が人間を想う怖さだと想う。だから、新井さんは人が好きなのだ。新井さん、死ぬまで頑張って下さい。僕も映画を撮り続けます。
[辛淑玉 / 人材育成コンサルタント]
 新井英一の歌は朝聴いてはいけない。涙で化粧がはげ落ちる。そう言えば、何度マスカラを塗り直したことか。私は、生きているのがイヤになるとき彼の歌を聴く。ふと、自分が愛されているのではないかと錯覚をするほどやさしい響きで包んでくれる。宗教心は無いが、死の床についたときは、彼の歌で送られたいと思う。
[筑紫哲也 / ジャーナリスト]
 長いこと知る人ぞ知る名手であった新井さんは「新人」ではない。その間に積み重ねてきた年輪があるからこそ、いま円熟の花を咲かせてる。その年輪の刻み目の間には、いろいろなものが詰まっている。それがいまから活きてくるだろう。始まったばかりの『全集』もその一例である。これからが楽しみという点では、やはり「新人」なのかも知れない。
[故中上健次 / 作家]
 新井の声は絶対に貴重だから俺たちにできることがあったらとにかく何でもやろうな。
[永瀧達治 / 音楽評論家、プロデューサー]
 今世の中の風の流れが少し新井の背中に向かって吹き出した。風向きがもっと早く変わっていてもよかったのにという思いはあるが、今だからこそ、新井の心には数百曲という溜め込んで磨かれた歌が眠っているのだ。そして、今だからこそ新しい歌が次々と生まれている。
[生江有二 / ノンフィクション作家]
 4年前、新井さんの「ひとり旅ツアー」に同行させてもらったことがある。ギター1本。他に荷物は、わずかな身の回り品が入った使い古しのバックがひとつだけ。旅の達人を見る思いだった。博多天神で行なったライブのオープニングナンバーが「ミシシッピー」だったことを覚えている。爽やかなブルースコード。野太い声が小屋一杯に響き渡る。新井さんにとって2年ぶりの博多だった。待ち望んでいたファンの顔がみるみる紅潮していくのが分かる。この曲はニューアルバム「ニューヨークへの旅」に収められているが、聴くたびにあの夜の熱を思い出す。
 博多から唐津に向かい、鹿児島まで足を伸ばす旅。汽車に揺られながら新井さんは語った。「歌手一人のパワーなど知れたものです。僕の歌を聴いてくれて感動し、元気になり、歌い続けていてくれという願いが、僕の原動力になっている」
 行く先々に「元気」になった人々が待ち受け、打ち上げには必ず、店に入り切れないほどの人数が押しかけた。
 鋼鉄の芯を持ちながら、素朴な優しさを腹一杯に抱えた新井さんの歌。その旅が続く限り、私たちも「元気」に前へ進むことができるのだ。

(50音順、敬称略)

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